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+++ 小さな宣教者 +++

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毎週日曜日の午後、教会の礼拝が終わった後、

牧師と11歳の息子は町に出て、

福音書のコピーを配って歩いていた。

ところが、ある日曜日の午後はとても寒く雨も降っていた。

息子は暖かい服とコートを着こんで元気良く父親に言った。

「お父さん、ぼく準備できたよ!」

牧師の父は言った。

「何の準備だって?」

息子は答えた。

「町に出かけて福音書のコピーを配る準備だよ!」

父はゆっくりと言った。

「今日はとても寒いし、雨もひどく降っているから止めようと思うんだ。」

息子は驚いてたずねた。

「でもお父さん、雨降りの日だって

助けを待っている人がいるかもしれないよ。」

「お父さん、ぼくだけでも行ってもいい?お願い...」

父親はちょっとためらったが、息子に答えた。

「じゃ、このコピーを持って行きなさい。

気をつけて行ってくるんだよ。」

「うん!ありがとうお父さん。」

息子は飛び上がって喜び、雨の中を出かけて行った。



息子は街の通りを歩いて出会った人に福音書のコピーを渡した。

2時間後、最後の一枚になった時には、

びしょ濡れになって体の芯まで冷え切っていた。

彼は街角で立ち止まり、周りを見渡したがもう一人もいなかった。

それで最初に目についた家のベルを鳴らした。

しばらく待ってもだれも出てこなかったので

もう一度ベルを鳴らし、ノックした。

すばらくすると、ドアがゆっくり開いた。



玄関にはとても悲しそうな顔をしたおばあさんが立っていた。

彼女は小さな声でたずねた。

「なにかご用ですか?」

輝くような笑顔で少年は答えた。

「おじゃましてすみません。

でもぼくはイエスがあなたをとても愛している

ってことを伝えたくて来ました。」

「これはぼくが持っている最後の一枚です。

これを読めば、イエスのことやイエスの深い愛のことが

わかります。」

そう言いながら福音書のコピーを渡して帰って行った。



次の日曜日、礼拝の中で牧師の父親は言った。

「だれか、信仰体験を話したい人はいますか?」

すると最後の列に座っていた老婦人が立ち上がり

静かに話しはじめた。



「この教会にはわたしの事を知っている人は

一人もいないと思います。

私はクリスチャンではありませんので

ここには一度も来たことがありませんから...。

主人が数年前に亡くなって、

私は全くこの世で一人ぼっちになりました。

そして、寒くて冷たい雨が降っていた

先週の日曜日には、生きる気力も希望もなく

もうこれ以上生きていてもしかたがないとまで

思いつめていました。

ところが死のうと決断したちょうどその時、

玄関のベルがけたたましく鳴ったのです。

私はびっくりしましたが、こう思いました。

『だれが来たか知らないけれど玄関に出なければ

どうせすぐに行ってしまうだろうから、

行ってしまうまでちょっとだけ待っていよう。』

私は待ちました。

しばらく待っていると、

ドアのベルがさらにけたたましく鳴り、

ドアをノックする音まで聞こえてきました。

それで私は玄関に行きドアを開けてみました。

私は自分の目を疑いました。

玄関の外には今までに見たこともないような

光り輝く天使のような小さな男の子が立っていたのです。

ああ、その時のことをみなさんにうまくお伝えできません。

彼の口から出てきた言葉は私の心を動かし、

死んでいた心に命を与えてくれました。

彼は天使のような声でこう言いました。

『ぼくは、イエスがあなたをとても愛している

ってことを伝えたくて来ました。』

彼は福音書をわたしの手の上に置くと

冷たい雨の中に消えていきました。

私は玄関を閉めて二階の自分の部屋に行き、

福音書を一言ももらさずゆっくりと丁寧に読みました。

そして、私の心は完全に癒されました。

今では私も恵まれた神の子であることを知っています。

福音書の裏にはこの教会の住所が書いてあったので

今日こうしてやってきました。

私に遣わしてくれた神様の小さな天使にお礼が言いたくて...

私の命を救ってくれた...。



いまや教会の中で泣いていない人は一人もいなかった。

そして神への賛美と感謝の声が教会中に響き渡った。

牧師の父親は最前列に座っている小さな天使のところへ行き

腕に抱き上げて、人目もかまわずすすり泣いた。



*****



もしかすると、今これを読んでいるだれかが

暗くて寂しい時を体験しているかもしれない。

クリスチャンかもしれないし、クリスチャンではないかもしれない。

問題を抱えていない人などいないのだから。

しかし、たとえどんな場合でも

どんな問題を持っていても、

たとえ、どれほど自分が暗いと見える状態に

落ち込んでいたとしても

これだけは真実だ。



『イエスは本当にあなたを深く愛している。』